2016年12月16日金曜日

行動してから考える -論文執筆-

私はつい最近までは、しっかり考えてから行動に移すタイプでした。

しかし今は「行動してから考える」ようにしています。なんとなくですが、日本人には前者が多くヨーロッパ人には後者が多いような気がします。

考えを変えるきっかけは、論文執筆でした。

私は色々なプロジェクトに手を出してしまっていて、それ自体はいいことなのですが、ひとつひとつのプロジェクトを終わらせる(=論文を書く)のを先延ばしにしてしまう傾向がありました。

論文を出して初めてその仕事が存在したことになりますので、論文を書くのは本来最優先事項のはずなのにです。

私は以前は、データが全て出揃ってから論文を書くようにしていましたが、それには膨大な時間がかかってしまいます。また、論文を書いているうちに新たな穴が見つかり、結局さらに追加実験が必要だと判断する場合も多々あります。

最近は、ある程度のデータが出ればまず論文を書いてしまうことにしています。これには否定的な意見もあるかもしれませんが、先に論文を書いてしまうことのメリットがいくつもあります。

(1) ひとまずストーリーを完結させられる。

(2) 説得力のある論文にするのにどのような追加実験が必要か、より明確にわかる。

(3) プロジェクトを終わらせるモチベーションが上がる。

(4) ボスにプレッシャーをかけられる。

(5) 結局早く論文をsubmitできる。

データをまとめた報告書などでもストーリーは作れるのですが、論文執筆になるとより細部に突っ込むので、ストーリーを明確にできます。また、それによりストーリーに穴が見つかり、どのような追加実験がその穴の補完に必要かが見えてきます。

追加実験の結果次第ではストーリーをごっそり変える必要もでてきますが、そんなことは追加実験の結果を見てから考えればいいのです。

また、先に論文を書いてしまうと、そのプロジェクトが終わりに向かっている実感が持て、終わらせるというモチベーションが上がります。それはボスに対しても同様です。

私のボスは頭は切れるしこちらが望めば相談にも乗ってくれるのですが、基本的には放任主義です。それは私にとってはとてもありがたく非常に働きやすい環境なのですが、他グループとの競争がない、もしくはボスのグラント申請がせまっていない限り、そのプロジェクトを先延ばしにする傾向があります。

その際、論文を書いてしまってボスに送りつけてボスに読んでくれとプレッシャーをかけます。はじめは読んでくれませんが、数回催促すると読んでくれて、コメントをくれます。ここまでくればsubmit一歩手前です。(ここからが長かったりするのですが。。)

この流れで仕事をしていると、プロジェクトの開始から1年以内に論文のsubmitにこぎつけられる場合が多いです。(1年でも長い気がしないでもないですが、データが揃ってから書き始めるというスタイルだと2年はざらにかかります。)

実験でも同じで、私の場合はまずは深く考えすぎる前に予備データを取ってしまいます。もちろん実験のデザインは重要なのですが、データを取る前にあれこれ考えて時間を使いすぎるのも考えようです。どうせ1回の実験でクリアな結果が得られることなんてないのですから、まずは予備データを取ってみて、そこから実験条件を追い込んでいくようにしています。結局時間の節約になる場合が多いです。

日常生活でも同じで、昔は深く考えてから行動するタイプだったように思います。しかし今はとりあえずトライして失敗して、それから考えるようにしています。(それでだいたい最後にはうまくいく場合が多い気がします。)


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2016年12月15日木曜日

笑いとプレゼン

2016年も残すところ二週間余りとなりました。

年末の風物詩というのはたくさんありますが、小さい頃から漫才が大好きな私にとってはM-1グランプリがその一つです。今年も面白い漫才ばかりで、優勝した銀シャリは圧巻の漫才でした。(完全な余談ですが銀シャリの鰻さんと私は同郷で、密かに応援していました。)

決められた時間内で聴衆の前で話すという点では、研究者のプレゼンも漫才と共通しています。漫才は聴衆を笑わせることが目的ですが、プレゼンでは自身の研究の面白さを理解してもらうことが主たる目的です。

うまく練られた漫才は本当に無駄がありません。よく笑いは「フリ・オチ・フォロー」といいますが、プレゼンにもそれが当てはめられると思います。

フリは、今どこにいて何をしているのかを共有するのに必要です。お客さんと共通認識をつくります。笑いは「共感と裏切り」というのもよく聞くフレーズですが、そもそも共通認識がないと「共感」も「裏切り」もしようがなく、オチ(ボケ)が活きません。

プレゼンではイントロがフリにあたります。イントロで、発表者が(科学のフィールドの)どこにいて、何が重要なのか、何を(どのように)しようとしているのかを、聴衆に理解してもらう必要があります。そして聴衆と発表者の共通認識を作ります。イントロをはしょってデータに行くのはフリなしでボケるも同じで、だいたいスベります。

もちろん、聴衆の知識によって必要なイントロは変わります。その分野の専門家達を相手にする場合と、学部生達を相手にする場合ではイントロの入りは変わるはずです。またフリが長すぎても締まりません。聴衆、見せるデータにあわせた必要十分なイントロが理想です。とにかくイントロの終わりで聴衆との共通認識を作れれば、イントロの目的は達成です。

オチはいうまでもなく漫才でいうボケです。プレゼンでいうとデータに当たると思います。

どういうデータを見せるかは個性が出るところですが、データ一つひとつは見やすく提示する必要があります。ボケを聞き取れなかったらまず笑えませんから、データも何を見せたいデータなのかをはっきり表示する必要があります。データの見せ方一つで聴衆の理解度は大きく変わります。

データを的確に見せたあとは、フォロー(ツッコミ、考察)が必要です。そのデータからどういう(サイエンス的に)面白いことがいえるのか、データを基に聴衆を導きます。

漫才でも一つのボケごとにツッコミがあることが多いように、プレゼンでも一つのデータごとにしっかりフォローをいれるといいのかなと思います。基本的には1つのスライドで一つのデータ、考察があればすっきりします。(もちろん例外はあります。)

漫才と同様、プレゼンにおいても前後のつながりが大事です。データを見せて、そのデータが次のデータの前フリになっていれば、ストーリーにつながりが出て聴衆も理解しやすくなります。そして大事なことですが、フリに沿っていないデータを見せるのは危険です。フリは必要十分であるべきです。データを見せるなら事前にフリを入れておく、フリを入れたのならそのフリに沿ったデータを必ず見せる、ということです。

また発表時間は限られていますので、持っているデータを全て見せるわけにはいきません。一番重要と思うデータで聴衆の関心がピークにくるように、見せるデータを的確に選んでしっかりストーリーを構成できれば文句なしです。

内容以外のところでは、しっかり練習する、はっきり話す、時間を守る、といったことも漫才のみならずプレゼンでも非常に重要だと思います。

色々書きましたが、私はお笑いは大好きではありますがてんで素人ですし、プレゼンに関してもまだまだペーペーです。

ですがプレゼンの資料作成で行き詰まったときは、笑いの「フリ・オチ・フォロー」を思い出して、フリは必要十分か、オチの見せ方はうまくできているか、フォローで聴衆を引き込める構成になっているかと、笑いを参考にして考えるとだいたい答えが見えてきます。

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