2018年7月1日日曜日

PhDディフェンスの準備

PhDディフェンスが数日後に迫ってきました。

オランダではPhDディフェンスは伝統的なスタイルで行われます。燕尾服着用です。

10分間の一般向けのプレゼンのあと、5人の審査員から50分間質問攻めにあいます。50分間耐え切れば、晴れて博士号です。

その日は午前中に主に外国から来てくださる5人の審査員達が各30分ずつセミナーを行い、午後に私のディフェンスがあります。その後軽いレセプションがあり、夜にはディナーの後、パーティーがあります。

ディナーやパーティーの段取り、ディフェンスに来てくれる家族の旅行手配等もすみ、あとは自分のディフェンスの準備だけです。

ディフェンスの向けての準備ですが、自分の博士論文を読み返すに尽きます。というか、それ以外やることがありません。しかしワールドカップが非常な盛り上がりを見せており、まだ全然論文を読み返せていません。

ディフェンスは数日後ですが、まだ全然緊張していないのが不安です。こういうときは数日前に緊張し、当日はリラックスできているのがベストな状態なのですが。。

まあ、成るようになると思って、今はひたすら自分の論文を読み返そうと思います。ワールドカップを見ながら。


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2018年5月3日木曜日

味方の作り方 -お手伝いのループ-

サイエンスの世界に限らないかもしれませんが、仕事をする上で多くの味方を持つというのは非常に重要です。味方を作る能力というのは、結果に直結します。

味方は研究計画段階から実験、論文やプロポーザルの執筆などほぼ全ての研究活動において大きな助けになってくれます。

味方を多く持つというのはそれだけで有利ですが、それには日ごろから人の手助けをするというのが近道だと感じます。そして他人を信じて頼ることが大切です。

同じグループの二人のポスドクを見ていると、研究スタイルが本当に対照的で面白いです。一人はアメリカ人の男性で、もうひとりはフィンランド人の女性です。二人とも30代半ば、プロジェクトも多少の違いがあるものの大筋で似ています。

その男性のポスドクは、何でも一人でやらないと気がすまないというタイプの研究者です。実験スキルは非常に高く、質の高いデータを出します。しかし他人に頼ることはほぼ皆無で、他人に積極的に力を貸すこともありません。一匹狼型と言えるでしょう。

もう一方の女性ポスドクは、他人に頼るのが非常にうまいです。実験スキルは見ている限りそこまで高いとは思いませんが、自分にできることとできないことをよくわかっていると感じます。自分の不得意分野はとにかく他人に頼りまくります。その代わり彼女は人にも積極的に力を貸し、例えば同僚の申請書や論文の添削などを日常的に行っています。他の同僚とのギブアンドテイクの関係をとてもよく築いていると感じます。

研究スタイルはその研究者の個性を大いに反映するので、色々なスタイルがあって当然で、またどのスタイルがベストかはわかりません。

ただし研究者は新しいことを発見して報告することが仕事ですので、当然論文の質と数で評価されます。

面白いことに、その他人に頼るのがうまいフィンランド人ポスドクは、周りに頼らないアメリカ人ポスドクの3倍近い数の論文を持っています。研究歴がほぼ同じにも関わらずです。hインデックスも3倍ほど違います。

彼らを見ていると、他人と助け合う関係を築くのが重要だと思い知らされます。

あるとき、ラボのテクニシャンが休暇で1週間ほどラボを空けることがあり、その間のラボのガラス器具の洗浄を何人かのポスドクにお願いして回っていました。1日10分ほどを数日間の作業量です。フィンランド人ポスドクは二つ返事で快諾したのに対し、アメリカ人ポスドクは「俺は物理学のPhDであって、皿洗いのPhDではない」と言い放ち、洗浄を手伝うことはありませんでした。彼の言い分もよくわかりますが、1日10分数日間の仕事を拒否することで、同僚とよい信頼関係を築くチャンスを逃すのはもったいないと思います。

他人を助けると、他人からも助けてもらえます。そうして助け合い、味方を増やしてきたんだなあと、そのフィンランド人ポスドクを見て思いました。それで結果にも直結しているのだから、素晴らしいと思います。

彼らを見てというわけではありませんが、私も同僚を積極的に助けるようにしていて、その手伝いに多くの時間を割くこともあります。しかし自分が困ったとき、同僚を頼れば必ず力になってくれます。

高い実験技術をもつことはもちろん大事ですが、如何に普段から味方を作る努力をしているか、それも非常に大切だと考えさせられます。

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2018年4月9日月曜日

博士論文提出!(ようやく。。)

博士論文を書き始めて早数ヶ月、ようやく書き上げました。

イントロに思いのほか時間がかかり、当初の予定より2ヶ月くらい完成が遅れてしまいました。

ただイントロ以外の章はすでに5人の審査員に送っていて読んでもらっているので、すぐに承認が得られると思います。

9本分の投稿論文を博士論文に入れたかったのですが、9本目の執筆が間に合いそうになかったため8本のみいれることにしました。

博士課程を始めるときに結果を最優先事項と考えていて、ファーストオーサー論文8報を最低限のノルマとして自分自身に課していました。まだ5本しか出版はされていませんが、1本は提出済みであと2本もすぐ投稿できる段階なので、ギリギリクリアといったところです。

150ページくらいのコンパクトな博士論文にしたかったのですが、結局180ページくらいに膨らむことに。

表紙のデザインは自由に決めてよいことになっているので、デザイナーのような仕事をしている姉にお願いしました。かっこいいものに仕上がっています。

今後は審査委員会の承認の後、ディフェンス(公聴会)の日程を決めます。ディフェンス用の会場が大学に2つしかなく、数ヶ月先まで常に埋まっているという状況らしいです。7,8月は夏季休暇で会場が使えないので、ディフェンスは6月もしくは9月になりそうです。なんとか6月にしたいのですが。

少しゆっくりしたいところですが、残りの論文を書き上げる必要があり、また月末に共同研究者が実験をしにくるのでそのサポートの仕事が2週間あります。それらが終われば1週間ほどバイクでどこかに旅に出たいです。

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2018年3月29日木曜日

ゴードン会議

気づけば前回の投稿からかなり経っていました。

年明けから、投稿論文や学位論文の執筆、アメリカの研究室訪問、国際学会などで予定がびっしりで、久しぶりの忙しい日々を楽しんでいました。

3月初旬にはイタリアで開かれたゴードン会議なる国際学会に参加していました。ゴードン会議は数百の科学の分野でそれぞれ別々に隔年で開催され、アメリカ・ヨーロッパ・香港のどこかで行われます。

民主制で、次回の開催地やチェアは参加者全員の投票によりその場で決定されるのがおもしろいところです。

私の分野ではこのゴードン会議が最も重要な学会の一つで、その分野の大御所からヤングスターまでが一同に介し、5日間ほどみっちりサイエンスに関して議論します。毎食をともにし、毎日午後の自由時間があります。そこで他の研究者と私生活や研究について話し合い、親睦を深めます。夜も日をまたぐまでワインやビールを片手に語らい合い、さながら学生時代の合宿のような様相です。

ゴードン会議の前には、2日間のゴードンセミナーがあり、こちらは若手が主体のセッションです。サイエンスはもちろん、今後のキャリアパスなどの話し合いもします。私はセミナーと会議の両方に参加しました。

私にとって今回は3回目のゴードン会議出席であると同時に、アムステルダム生活最後の学会です。全くの偶然ですが、4年前のアムステルダム生活最初の学会もゴードン会議、しかも同じ場所での開催でした。

4年前はこの分野に来たばかりで右も左もわからない状況でした。同じ会場に立つと、その情景がフラッシュバックされて懐かしい思いもしました。

今回はゴードンセミナーでディスカッションリーダーを任され、冒頭で10分間のセッションイントロダクションを行いました。5人の若手スピーカーの研究を1つの流れにまとめて簡潔に紹介するのですが、これがムズカシイ。。5人ともそれぞれ毛色の違う研究をしているので、それらを1つの流れに持って行くのは至難でしたが、何とか役割を全うできたと思います。スピーカーの発表はどれも素晴らしく、発表時間も厳守してくれました。聴衆から鋭い質問が次々飛び出し、熱い議論が展開されました。ディスカッションリーダーとしてはとてもやりやすい状況でした。

ゴードン会議のほうでは、短いトークを1つとポスター発表2つ行いました。どちらも大変有意義な時間でした。

午後の自由時間には恒例のサッカー大会が開催され、30人ほどの参加者がフルピッチのコートで1つのボールを追いかけました。共同研究者のフィンランド人の先生が私の足を思いっきりスライディングで削ってきましたが、翼くんバリにかわして事なきを得ました。老若男女、色んな人の人間性が垣間見えて楽しかったです。

思えばこの4年間で色々なネットワークができ、今回の参加者も半数くらいは顔見知りでした。大御所の先生も若手も私がやってきた研究を知ってくれており、4年間での成長を少し感じさせてくれました。

学会の終わりには選挙があり、チェアと開催地の決定が行われました。大変名誉なことに、私は次回ゴードンセミナーのチェアに選ばれました。2020年、香港でのゴードンセミナーの運営を行います。スポンサー集めやプログラム作成などもありますが、どうやら香港でサッカー大会用のピッチを見つけることが最も難しい仕事になりそうです。

私はこの先のポスドクでは少し研究分野を変えますが、この分野の人たちは本当にファミリーのような感じがします。次回はチェアとしての役割もありますので、このファミリーとももう少し、一緒に仕事ができることになりそうです。この2年でさらに成長した姿を見せられるように、今後も精一杯研究を楽しみたいと思います。

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2017年11月16日木曜日

博士論文執筆進まない。。

年末くらいに博士論文を提出したいので、ぼちぼち書き始めています。しかしあんまり手につきません。

すでにpublishされている論文とsubmitした論文をほぼそのまま(多少アレンジはしますが)研究内容のチャプターに使えるので、新規に何かを書く必要はほとんどありません。体裁を整えるくらいです。

ただしイントロダクションは別で、一から書かないといけません。15ページくらいの簡潔なものにまとめようと思いますが、一般的なことから始めて実験のチャプターにスムーズにつなげるようにするにはかなりの工夫が必要で、わかりやすい絵や図も作る必要があります。

結構な仕事量であることはわかっていたので、なんだかいつも先延ばしにしてしまい、他の論文を書く仕事などを優先的にやってしまいます。

博士論文は書けば終わるという仕事で、質を気にしだしたらキリがありません。それに雑誌に投稿する学術論文やプロポーザルと異なり、うまく書いたから何かが変わるというものでもないのでモチベーションがあまりあがらないのが正直なところです。しかしせっかく書くんだからそれなりの質にしたいという思いもあり、どれくらいのエネルギーを使うべきかはっきりしないまま後回しにしてしまっています。

まあとにかく書くしかないんでモチベーションどうこうではないのですが。

しかし書きものの進み具合は本当にモチベーションに左右される。。やる気さえ起きれば一週間で十分終えられる類の仕事ですからね。。

一ヶ月後には提出をしてゆっくり冬休みに入りたいものです。


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2017年11月6日月曜日

ポスドク職決定(仮)

アプライしていたポスドクのポジションのスカイプ面接を先日行い、無事オファーをいただきました。

正式に契約するのはラボ訪問後になりますが、来年の秋からアメリカ東海岸の大学で1回目のポスドクをすることになると思います。

そこのボスは一度学会で会ったことのある人で、そのときに研究の話や雑談を多くしていてお互いに知っている関係でした。研究分野は少し異なりますが、お互いに物理工学出身でレーザーを使った装置の応用を仕事にしていることもあり、会ったときから非常にウマが合いました。オファーをいただくにおいて、一度直に会ったことがあるというのが大きく働いたのは間違いありません。もし彼に会ったことがなければ、応募から1週間でのスピードオファーはなかったと思います。

今のボスにポジションが決まったと報告するととても喜んでくれました。とてもいい推薦状を送ってくれたようですし(中身は私は見れませんが)、普段から応援してくれていたので感謝しています。

ポジションは決まったといってもポスドク用のフェローシップにはアプライしようと思います。フェローシップやグラントの受賞歴は近い将来重要になるでしょうし、また純粋に自分の給料が少し高くなります(オランダからのRubicon fellowshipだと年額63,000ユーロももらえます)。所属先も給料を払う必要がなくなりますし、フェローシップを取れると双方にとっていいことづくめです。もちろんどのフェローシップも競争率は高いですが、申請書をしっかり練ればチャンスは十分にあると思います。次のボスも申請書執筆に協力してくれるといってくれているので、しっかり準備したいと思います。

自分が次にどの方向に行くか具体的に決められていて、ポスドクのポジションが得られていることが博士課程での自分に対してのノルマの一つでしたので、それがクリアできて少しほっとしています。

この文章を書いているときに気づきましたが、4年前のちょうど今日が、オランダに現在のポジションの面接に来た日でした。4年前も今日のように暗くて寒く、小雨が止まない日でした。あの日の自分が望んでいたくらいの成長がこの4年間でできているのかなぁ、なんて少し考えてしまいました。

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2017年10月19日木曜日

ポスドク職探し、博士論文執筆など。

3ヶ月以上ぶりの更新になります。
学会に出たり論文書いたりゲイパレードを見に行ったりドラクエ11をやっているうちに思いのほか時間が経っていました。

今週5本目の論文が査読に回り、ある程度博士論文の目途をつけないといけないなあと思いつつ全く執筆が進みません。。締め切りがない仕事のモチベーションを保つのは本当に難しい。

オランダでは博士論文は大学内外の5人の先生に査読してもらいます。その査読には1ヶ月半くらいかかるようで、オッケーが出れば博士論文審査会(ディフェンス)の会場予約ができます。

会場の数は限られているため数ヶ月先まで会場はいっぱいで、聞いたところ今の時点で来年1月まで予約が埋まっているとのこと。例えば12月に博士論文を提出したとして、ディフェンスができるのは4月くらいになりそうです。

私の契約は来年2月で切れますが、ボスが契約延長のオファーをくれました。ですので2月以降も博士号取得までは給料の心配はいらなそうですし、残りのプロジェクトを終える時間的余裕ができました。

学位論文執筆と同時に次のポストを探さないといけません。2ヵ所、ポスドクのポジションにアプライしていましたが、いずれもインタビューにたどりつくことなく不採用となりました。これも縁と思って不採用はあまり気にしないようにしています。

今月新たに1ヵ所応募するつもりです。そのグループはパルスレーザーを使った脳のイメージング技術を開発していて、私がポスドクとして経験しておきたい多くのことができそうな場所です。今の私の分野とは多少違いますが、そこのボスと先月の学会で初めて会いました。学会中は彼と話をする機会が多くありましたが、かなりのオープンマインドの持ち主で好印象を持ちました。

今までは会ったことのない先生のグループに応募してきましたが、今回はお互いを知っている分、話は進みやすいと思います。いい知らせが来ることを願うばかりです。思えば博士課程のポジションに応募したときも、決まらないときは全然決まりませんでしたが、決まるときは応募から採用までものの数週間で決まりました。ポスドクのポジションも同じだと思いますので、焦らずじっくり進めて行きたいと思います。

再来週には冬時間になるようで、暗くなるのが一気に早まります。ダークなシーズンに差し掛かりますが執筆にはうってつけだと自分に言い聞かせて、博士論文を早くまとめたいと思います。いや、その前にドラクエをクリアしないと。。


 7月のゲイパレード(アムステルダム)。
初めて見に行きましたが楽しかったです。

 ある夏の日のハーレム(私が好きな町のひとつ)。

秋のデンハーグ。大使館での衆院選投票の帰り道。建物がかわいいです。
どんよりとした曇り空がオランダ感を演出しています。